紅掛花色（べにかけはないろ）は、日本の伝統色の中でも特に繊細で奥ゆかしい色として知られています。
花色のやわらかい青みに、ほんのひとさじ紅（べに）を重ねたような、上品で落ち着きのある色合いが特徴です。
派手さを抑えつつも、深みと華やかさを感じられるため、古典的な場面だけでなく、現代インテリアやファッションにも自然に溶け込みます。
本記事では、紅掛花色の成り立ちや色の特徴、活用シーン、近い色との比較まで、初めて知る人にもわかりやすく丁寧に解説します。
色の魅力を知ることで、和の色の奥深さをより身近に感じていただけるでしょう。
紅掛花色とは？
紅掛花色（べにかけはないろ）とは、日本の伝統色のひとつで、花色に紅をひとさじ落としたような、上品でやわらかな赤みを帯びた青色のことです。
青と紫の中間のような花色に、わずかに紅色を重ねたことで、落ち着きと華やかさが絶妙に混ざり合う、非常に繊細な色合いが特徴です。
この色は、光の当たり方や素材の質感によっても印象が大きく変わる奥行きを備えており、自然光の下では青みが澄んだ透明感を帯び、室内の照明では紅の柔らかな温かみがふんわりと浮かび上がるなど、多様な表情を見せます。
また、布や和紙、陶器など素材ごとの発色の違いによって、優雅さや静けさが際立ったり、時には上品な華やかさを演出したりと、使う場面によって豊かな雰囲気を生み出す魅力があります。
長い歴史の中で親しまれてきた色でありながら、現代のファッションやインテリアにも自然に溶け込む柔軟性を持ち、伝統とモダンの美しさを併せ持った、非常に奥深い色といえるでしょう。
色のイメージと印象
- やわらかさと上品さが共存する色味で、見る人に安心感と落ち着きを与える特徴的なトーン。素材によっては深みが増し、より洗練された印象を生み出し、和の美しさをさりげなく引き立てる効果もある。さらに、布地や紙の質感によって表現される風合いが変化し、柔らかく穏やかな雰囲気から、凛とした気品まで幅広く表現できる奥行きを備えている。
- 青みの中にふんわりとした紅が感じられる絶妙なニュアンスがあり、光の当たり方によって青紫にも紅みのある柔らかな紫にも見える、多層的で表情豊かな色合い。朝夕の光では紅みが強まり、昼の自然光では青紫が際立つなど、時間帯によっても印象が変わるため、静けさと華やぎが同居する魅力的な色として親しまれている。観賞物や工芸品に使われると、その変化がさらに深く味わえる点も特徴である。
- 古典的・和風の雰囲気を持ちながら、現代でも使いやすい柔らかカラーで、インテリア・ファッション・雑貨など幅広いデザインに馴染み、上品さと個性を同時に演出できる万能な色味。特にアクセントカラーとして取り入れると繊細な色のニュアンスが際立ち、落ち着きのある空間や上品な装いを作り出すことができる。和洋どちらのスタイルとも相性がよく、使い方次第で高級感や温もりの演出にもつながる柔軟性の高さが魅力である。
紅掛花色の色コード
| 紅掛花色の色コード 紅掛花色は、ややくすんだ青紫にごく微細な紅が加わった奥深い色合いを持っています。
以下は、実際の色味をイメージしやすくするための参考情報です。
HEX（目安）：#7A6DAF
落ち着いた青紫にほのかな紅が混ざっており、光の当たり方によって紫寄りにも青寄りにも見える柔らかい中間色です。
くすみカラーとしての上品さと、伝統色ならではの気品を併せ持っています。
RGB（目安）：122 / 109 / 175
赤みと青みのバランスが絶妙で、透明感のある青紫に優しい温かみを帯びた印象を与えます。
自然光では澄んだ青寄りに、室内光ではやわらかく紫寄りに見えるなど、環境によって表情が豊かに変化します。
CMYK（目安）：30 / 38 / 0 / 31
印刷物では深みと鮮やかさを両立しやすいカラーバランスで、和紙・パッケージ・工芸印刷などにも相性が良い配合です。
素材によって重厚にも淡くも見せられる汎用性の高い色設定です。
※伝統色は資料ごとに色味の解釈が異なるため、数値はあくまで目安としてお使いください。
どんな場面で使われる色？
和装・着物
落ち着いた品のある発色が、着物の地色や帯の差し色としてよく使われます。
特に上品で大人の雰囲気を引き立てる色として人気があります。
また紅掛花色は、光の当たり方や見る角度で青み・紫み・紅みが絶妙に変化するため、着物特有の“揺れ”や“艶”をより美しく引き立ててくれます。
歩くたびに色が微妙に移ろうことで、華美になりすぎずに上質な存在感が生まれ、季節を問わずあらゆる柄や素材と調和しやすい万能さも魅力のひとつです。
フォーマルな場面では凛とした気品を、日常の装いでは落ち着きをそっと添え、幅広い世代から愛されています。
日本画・工芸品
青系に紅が混ざった独特の色味は、工芸品や絵画にも利用され、柔らかい陰影や奥行きを表現する際に重宝されます。
特に日本画では、自然の微妙な色の移ろいや空気感を描くときに相性がよく、静謐で幻想的な雰囲気を醸し出すことができます。
山々の遠景、空の淡い変化、花びらの陰影などを表現する際、紅掛花色は優れた中間色として作品全体に深みと静かな華やかさを与えます。
陶器・漆器・織物などの伝統工芸でも、素材の凹凸や質感と混ざり合い、しっとりとした艶や上質感を生み出し、作品そのものの美しさをより際立たせる効果があります。
インテリアや雑貨
くすみ系カラーとして、現代でもインテリアやファブリックに馴染みやすいのが魅力。
紅掛花色は柔らかい中にも深みと上質さがあり、部屋全体の雰囲気を穏やかに整えながら、控えめなアクセントとして程よい存在感を放ちます。
クッション、カーテン、ラグ、ベッドリネンなどに取り入れると、空間が落ち着きながらもどこか洗練された印象になり、和風・北欧・ナチュラルなど幅広いインテリアスタイルに自然と溶け込みます。
また、ノートやペン、食器、雑貨などの小物に使われると、日常の中にさりげない華やかさと品の良さを添えてくれるため、大人の雰囲気を好む人にも人気です。
紅掛花色と似ている色
| 色名 | 特徴 |
| 花色 | 青紫寄りのやわらかい色。紅掛花色より紅味が少なく、より清楚で穏やかな印象を与える。光の当たり方によってはやや青寄りにも見え、繊細で涼しげな雰囲気を演出できる点が魅力。 |
| 紅掛空色 | “紅を掛けた空の色”というニュアンスで、花色より少し淡い印象。紅掛花色と比べると軽やかさがあり、やわらかいグラデーション表現に適している。空気感を感じさせる色として日本画やテキスタイルで重宝される。 |
| 藤紫 | より紫寄りで、華やかさのある色味。紅掛花色より彩度が高めで、エレガントで優雅な雰囲気を強調したいシーンに向いている。上品さと華やかさのバランスが良く、アクセントカラーとしても人気。 |
記事のまとめ
紅掛花色（べにかけはないろ）は、花色を基調とした青紫に、ほんのりと紅を含ませた気品あふれる色です。
青の静けさ、紫の優雅さ、そして紅の柔らかさが重なり合うことで、他にはない独特の深みが生まれています。
古くから着物や工芸品に取り入れられてきた色ですが、現代ではくすみカラーとして幅広いデザインに応用され、和の趣とモダンな雰囲気を両立させる万能カラーとして注目されています。
この色を知ることで、日本の伝統色が持つ奥深い世界に一歩踏み込み、日々の暮らしの中で色選びを楽しむヒントにもつながるでしょう。
紅掛花色（べにかけはないろ）は、花色にほんのりと紅を重ねた、上品で奥ゆかしい日本の伝統色です。
青と紫、そしてかすかに感じる紅の絶妙なバランスにより、落ち着きがありながら華やかさも秘めた色として、多くの場面で活用されています。
和の雰囲気を感じられる美しい色を知ることで、着物やデザイン、インテリア選びにも新しい発見が生まれるでしょう。
