風景画を描いてみたいけれど、「何から描き始めればいいのかわからない」と感じていませんか。
風景画は情報量が多く、空・木々・建物・地形・光など、描くべき要素が一度に目に飛び込んでくるため、何から手をつければよいのか迷ってしまう方はとても多いです。
特に初心者の場合、細部に目が留まりやすく、その場で手が止まりやすいのも特徴です。
しかし、実は風景画は“描く順序”と“観察の仕方”を理解すれば、驚くほど描き進めやすくなります。
また、風景画には明確なセオリーがあり、それを知っているかどうかで難易度が大きく変わります。
例えば、全体の形を捉えることから始めるのか、光と影を先に意識するのか、構図のどの部分を最初に決めるのか——こうした考え方を理解するだけで、風景を見る目が一段階レベルアップし、描写も格段にスムーズになります。
本記事では「風景画はどこから描くべきか」という初心者の永遠の疑問に答えつつ、描き始める前の準備、観察のポイント、構図の整え方、そして実際の描写プロセスまでを、順序立てて体系的に解説します。
さらに上達のコツや挫折しにくい練習方法なども紹介し、初心者でも安心して風景画に取り組めるよう、実践的な内容を丁寧に盛り込みました。
これから風景画を始めたい人も、途中でつまずいてしまった人も、このガイドを通して“どこから描けば良いのか”が明確になり、風景画をより楽しめるようになるはずです。
風景画を描く前に知っておきたいポイント

描き始める前に知っておくべきコツ
風景画で大切なのは、細部よりも“全体を捉える視点”を持つことです。
木の葉一枚や建物の窓の形など、小さなパーツに意識が向きすぎると、全体のバランスが崩れやすくなります。
まずは「どんな景色なのか」「主役はどこにあるのか」「視線の流れはどうなっているか」を落ち着いて観察しましょう。
さらに、光の方向、影の強さ、色のまとまりなども最初に把握しておくことで、描き進める際の迷いが格段に減ります。
また、初心者ほど完璧を求めがちですが、最初から正確に描こうとしすぎると手が止まってしまいます。
最初はラフに形を捉え、あとから必要な部分だけを整える意識のほうが、結果的に自然で魅力ある風景画に仕上がります。
スケッチ段階で“描き過ぎない勇気”を持つことも大切です。
必要な道具と画材の一覧
初心者が風景画を始める際に必要な道具は意外とシンプルです。
基本セットとしては、鉛筆(HB〜2B程度)、練り消しゴム、スケッチブックがあれば十分スタートできます。
描き心地の違いを楽しむために、数種類の鉛筆を揃えておくと陰影表現がしやすくなります。
加えて、色を使いたい場合は水彩絵の具や色鉛筆が最も取り入れやすい画材です。
特に水彩は“にじみ”や“透明感”を活かして空や遠景を美しく描けるため、風景画との相性が非常に良いのが特徴です。
また、パレット、筆の種類、発色の違いなど、使う画材によって表現の幅が広がります。
最初から高級品を揃える必要はなく、扱いやすい道具から少しずつ増やしていくのがおすすめです。
構図の取り方:風景を美しく描くために
風景画では“構図”が作品全体の印象を大きく左右します。
初心者がまず覚えておきたいのは「三分割構図」です。
画面を縦横3分割し、その交点に主要なモチーフを配置すると、安定感のある美しい画面になります。
また、風景画には奥行きを出すために「手前」「中景」「遠景」を意識することが大切です。
三層構造を意識することで、空間の深さや視線の流れが自然に生まれます。
さらに、斜めのラインを活かして視線誘導を作ったり、空と地面の比率を意図的に変えて印象を操作したりすることもできます。
構図は一度決めたら終わりではなく、スケッチ段階で何度か調整しても構いません。
描き始める前にほんの数分だけ構図を考えることで、作品の完成度は驚くほど向上します。
風景画はどこから描く?基本ステップを解説

最初にスケッチする理由とその方法
風景画は、必ず全体のスケッチから始めるのが基本です。
最初に地平線や大きな山、建物などの配置を薄く描き、全体のバランスを確認します。
この段階では、正確さよりも位置関係を重視しましょう。
特に地平線の位置は絵の印象を大きく左右するため、最初にしっかり決めておくことで構図の安定感が増します。
さらに、主役となるモチーフをどの位置に置くかをラフに描いておくことで、画面内の余白の使い方や視線の流れも自然と意識できるようになります。
スケッチ段階では「描き込みすぎないこと」も重要です。
細部に集中してしまうと途中で描く手が止まり、迷いが生まれやすくなります。
あくまで“絵の設計図”として、シンプルな線で構成を決めていくイメージで進めましょう。
また、複数の構図を試して比較する「サムネイルスケッチ」を描く習慣をつけると、より自分の理想に合った構図が選べるようになります。
これらの準備を丁寧に行うことで、絵を描き進める際の迷いが大幅に減り、安心して筆を動かせるようになります。
描写のテクニック:遠近感と質感の表現
描き込みに入る際は、遠くから手前へ描くのがコツです。遠景は線を薄く、色も淡くすると距離感が出ます。
これは空気遠近法の考え方にも通じており、遠くのものほどコントラストが弱く、輪郭も曖昧になる性質を利用しています。
一方、手前の木や建物はコントラストを強め、明暗をしっかりと描くことで奥行きが強調されます。
特に手前のモチーフを丁寧に描くことで、画面全体に“立体感”が生まれ、より臨場感のある風景に仕上がります。
質感の表現では、物体ごとに特徴を捉えることがポイントです。
例えば、木の幹のザラザラとした質感、雲の柔らかさ、岩の硬さなど、質感に応じて線の方向・強弱・密度を変えることで、自然物のリアルさが増します。
すべての部分を精密に描こうとするのではなく、絵全体の主役に合わせて「どの部分を重点的に描くか」を意識すると、メリハリのある作品に仕上がります。
また、光の当たり方を考慮し、陰影の差をつけることで質感がより引き立ちます。
初心者におすすめの風景画テーマ3選

初心者には、シンプルなモチーフの風景がおすすめです。
例えば「空と地面だけの風景」「一本道が続く田舎道」「海と空が広がる海岸」などは、構図が単純で練習に向いています。
要素が少ない風景から始めることで、遠近感や構図の基本を無理なく身につけることができます。
さらに、初心者に適したテーマにはいくつか共通点があります。
第一に“形がわかりやすいこと”。
空と地面の境界線、一本道のパースライン、海岸線の水平ラインなどは視覚的に捉えやすく、スケッチが苦手でも取り組みやすい構成です。
第二に“光の変化が観察しやすいこと”。
時間帯によって影が伸びたり、空の色が変わったりするため、光と影の理解にもつながります。
第三に“描き込み過ぎなくても成立すること”。
要素が少ないため、質感表現が難しい部分が少なく、初心者でものびのびと描けます。
例えば空を中心にした風景では、雲の形やグラデーションの練習ができます。
田舎道の風景では、遠近法やパースの理解が深まり、手前から奥に続く道を描くことで自然と空間把握の力が身につきます。
海と空の風景では、水面の反射や遠景と近景の色の違いを学べます。
このように、初心者向けテーマを選ぶことで「どこから描くか」に迷わず、基礎力を効率よく養うことができます。
自分の描きたい雰囲気に合わせて、まずは取り組みやすいテーマから挑戦してみましょう。
風景画の上達につながる練習法

定期的な練習の重要性
風景画は一度で上手く描けるものではありません。
短時間でもよいので、定期的に描く習慣を作ることが上達への近道です。
毎回テーマを決めて描くことで、自分の苦手な部分にも気づきやすくなります。
さらに、練習記録を残しておくことで、過去の絵と現在の絵を比較し成長を実感でき、学びを整理する習慣も身につきます。
また、同じテーマを繰り返し描く「反復練習」は基礎力強化に非常に効果的で、光の変化や影の落ち方、季節による色味の違いなど、観察力そのものが向上します。
継続することで、自然と「どこから描けばいいか」に迷いが出にくくなり、スムーズに描き始められるようになります。
さらに、定期練習の中で“時間制限”を設けるのもおすすめです。
10分・20分など短い制限時間をつけることで、描き込みすぎを防ぎ、構図把握や大きな形を捉える力が鍛えられます。
プロのアーティストも取り入れている効果的な練習法で、集中力が高まり、描くスピードも自然と速くなります。
習慣化すれば、日常の中で風景を見る目が鍛えられ、練習していない時間でも「これはこう描けそうだ」と思考する力が育ち、表現の幅が広がります。
他のアーティストの作品を参考にする
上達したいなら、他のアーティストの風景画を見ることも大切です。
完成作品だけでなく、制作途中のスケッチや工程を見ることで、描き始めの考え方を学べます。
「この人は空から描いている」「大きな形を優先している」など、気づきを自分の練習に取り入れてみましょう。
さらに、複数の作家の作品を比較すると、自分の描きたいスタイルが見つけやすくなります。
写実的な風景、淡い水彩表現、力強い筆致の油絵、ミニマルな構図など、それぞれに異なるアプローチがあります。
どの手法が自分に合っているかを知ることは、上達を加速させる大きな一歩です。
また、美術館やオンラインギャラリー、SNSなどでアーティストの作品工程を研究すると、筆の動きや色の重ね方、陰影のつけ方など、教科書では得られない実践的な学びを得られます。
観察力を磨くことで、自分の作品にも自然と深みが生まれていきます。
初心者が挫折しないためのヒント

描けないと感じた時の対処法
「思ったように描けない」と感じる時は、難しい風景に挑戦しすぎている可能性があります。
一度モチーフをシンプルに戻し、スケッチだけを繰り返してみてください。
また、途中で手を止めず最後まで描き切ることも大切です。
完成させる経験が自信につながります。
さらに、描けない理由を客観的に分析することも重要です。
例えば「どの部分で手が止まったのか」「なぜ難しいと感じたのか」を言語化してみると、苦手な要素が明確になります。
遠近感が苦手なのか、構図作りが悩ましいのか、陰影がうまくいかないのか——原因がわかれば、改善に向けた練習がしやすくなります。
また、あえて失敗作を残しておくことで、後から見返したときに成長を実感でき、モチベーションの回復にも役立ちます。
「今日はうまく描けない」と思う日は、思い切って“観察だけの日”にするのも効果的です。
外に出て風景を写真に撮ったり、光と影の変化を観察したりするだけでも、次に描くときのヒントが増えていきます。
描くことそのものをお休みしても、観察力は確実に育ちます。
モチベーションを保つためのコツ
モチベーションを保つには、成果を可視化することが効果的です。
描いた風景画を日付付きで保存しておくと、成長を実感できます。
また、SNSやコミュニティで作品を共有するのもおすすめです。
人の目に触れることで、描く意欲が自然と高まります。
加えて、目標設定を小さく分けることも大切です。
「今日は空のグラデーションだけ描く」「10分スケッチを3枚だけ描く」といったミニ目標なら達成しやすく、達成感が積み重なることで継続しやすくなります。
特に忙しい日でも取り組める小さな練習を用意しておくと、挫折を防ぐ効果が高まります。
また、描く環境を整えることもモチベーション維持に直結します。
好きな音楽を流したり、好きな画材を使ったりするだけでも、描く時間が楽しみに変わります。
さらに、完成した作品を額に入れたり部屋に飾ったりすることで、“達成感”が視覚的に残り、次の作品への意欲がさらに湧いてきます。
モチベーションは一定ではなく波があるものなので、「落ちる日があってもいい」という前提で取り組むことで、無理なく長く続けられるようになります。
記事のまとめ
風景画は、細部からではなく全体のスケッチから描き始めるのが基本です。
特に最初のスケッチ段階では、大きな形や構図の流れをつかむことが何より重要で、これが作品全体の完成度を大きく左右します。
主役となるモチーフの位置、画面の余白、遠近のバランスを最初にしっかり決めておくことで、途中で迷うことが少なくなり、安定感のある風景画に仕上がります。
また、描写に入る前に光の方向や影の落ち方を観察しておくことも大切です。
光の情報を把握しておくと、陰影に説得力が生まれ、より立体感のある表現が可能になります。
これらの工程を丁寧に踏むことで、初心者でも無理なく完成度の高い風景画を描けるようになるのです。
風景画の練習では、まずシンプルな構図のテーマから始めることを強くおすすめします。
空と地面だけの風景、一本道、海と空が広がる水平線などは、形を把握しやすく、遠近感や構図の練習に最適です。
徐々に樹木や建物、複雑な地形などを加えていくと、無理なくステップアップできます。
さらに重要なのは“継続する習慣”です。
短時間でも良いので定期的に描くことで、観察力・構図力・表現力が着実に伸びていきます。
過去の作品を見返して成長を実感したり、SNSで他の人と作品を共有したりすると、モチベーションも維持しやすくなります。
描けない日があっても落ち込まず、楽しみながら続けることが上達の最大の近道です。
まずは気負わず、あなた自身が「描いてみたい」と思える風景を一枚描いてみましょう。
描くほどに観える景色が変わり、描く楽しさがどんどん広がっていきます。

