露草色(つゆくさいろ)とは、日本の伝統色のひとつで、夏の野に咲く露草の花の青を写し取ったような、やや紫みを帯びた澄んだ青色を指します。
古くから和歌や染色に用いられてきた色で、現在も和服・デザイン・インテリアなど幅広い分野で親しまれています。
本記事では、露草色の意味や由来、色の特徴、色コード、使い方までをわかりやすく解説します。
露草色とは?

露草色とは、ツユクサ(露草)の花の色をもとに名付けられた日本の伝統的な青色です。
ツユクサは日本各地の野原や道端に自生する身近な植物で、夏の朝に小さく可憐な花を咲かせます。
朝露に濡れて咲く露草の花は、澄んだ青色の中にほのかな紫を感じさせ、鮮やかでありながらも一瞬で消えてしまうような儚さを併せ持っています。
その印象的な色合いが、人々の記憶に残り、やがて「露草色」という色名として定着しました。
一般的には明るく透明感のある青紫系の色として認識されており、空の青よりもやや深みがあり、群青ほど重くならない絶妙な中間色といえます。
濃すぎず軽やかな印象を持つため、涼しさや清潔感、知的な雰囲気を表現したい場面に適しているのが特徴です。
露草色の由来と歴史

露草色の由来は、万葉集の時代までさかのぼるとされています。
万葉集や古今和歌集などの和歌には、露草がたびたび登場し、朝露とともに咲いては昼にはしぼんでしまうその姿から、「はかない美しさ」「移ろい」「つかの間の想い」を象徴する存在として詠まれてきました。
このような文学的背景が、露草色に情緒的で繊細なイメージを与えています。
平安時代になると、露草の花弁から採れる青い色素が染色に利用されるようになります。
この色素は発色が美しい一方で、水に溶けやすく定着しにくいという特徴がありました。
そのため、着物を本染めする色としてではなく、下絵用の染料として重宝されます。
特に、後に発展する友禅染では、水で洗い流せる性質を活かして下絵を描く工程に用いられ、精緻な模様を生み出すための重要な役割を果たしました。
この「洗えば消える」「一時的に存在する」という特性は、露草の花そのものの性質とも重なり、露草色が「一瞬の美」「儚さ」「移ろう時間」を象徴する色として受け継がれていく理由となっています。
こうした歴史的背景を知ることで、露草色は単なる青色ではなく、日本人の美意識や季節感が凝縮された伝統色であることが理解できるでしょう。
露草色の色の特徴

露草色には、次のような特徴があります。
- 青色の中にわずかに紫を含む
- 明度が高く、透明感がある
- 涼しげで上品な印象
- 夏や初秋を連想させる色合い
露草色は、一般的な青色と比べるとやや赤み(紫み)を含んでいるため、冷たくなりすぎず、どこかやさしく柔らかな印象を与えます。
この微妙な色味の違いが、自然の花を思わせる奥行きや、和色ならではの繊細さを生み出しています。
また、明度が高く透明感があることから、重さや圧迫感を感じにくいのも大きな特徴です。
視覚的に「抜け感」があるため、広い面積に使っても主張しすぎず、背景色やベースカラーとしても扱いやすい色といえるでしょう。
涼しげで上品な印象を持つ露草色は、暑い季節に視覚的な清涼感をもたらし、見る人に落ち着きや爽やかさを感じさせます。
特に夏から初秋にかけての季節感と相性が良く、日本の四季を意識した配色やデザインに自然に溶け込みます。
派手すぎないため、控えめで知的な雰囲気を演出できるのも魅力です。
主役としても脇役としても使いやすく、組み合わせる色や素材によって表情が変わる点も、露草色ならではの奥深さといえるでしょう。
露草色の色コード一覧

デジタルデザインや印刷物で露草色を再現する際は、数値として近い色コードを設定する必要があります。
露草色は自然由来の伝統色であるため、厳密に統一された数値は存在せず、目的や媒体によって「露草色らしさ」を調整することが重要です。
代表的な近似色コードの一例は、以下の通りです。
| 表記形式 | 色コード例 |
|---|---|
| HEX | #4C6CB3 |
| RGB | R:76 / G:108 / B:179 |
| CMYK | C:58 / M:40 / Y:0 / K:30 |
HEXやRGBは、Webサイトやアプリ、デジタルイラストなど画面表示向けの数値で、透明感のある青紫を比較的忠実に再現できます。
一方、CMYKは印刷向けの設定で、紙質やインクの特性によって見え方が変わるため、実際の仕上がりを確認しながら調整することが欠かせません。
※伝統色は厳密な数値が定められていないため、背景色や照明、使用シーンに応じて微調整すると、より自然で露草色らしい表現になります。
露草色が持つイメージ・意味

露草色には、次のようなイメージや意味が込められています。
- 清涼感・涼しさ
- 儚さ・一瞬の美
- 知性・落ち着き
- 上品・繊細
露草色は、見る人にひんやりとした空気感を想起させるため、視覚的な清涼感を強く与える色です。
特に暑さを感じやすい季節には、露草色を取り入れることで、心を落ち着かせる効果が期待できます。
また、露草の花が朝に咲いて短時間でしぼむ性質から、「儚さ」や「一瞬の美」を象徴する色としても捉えられてきました。
このため、露草色は強い主張や永続性よりも、今この瞬間の美しさや淡い感情を表現する場面に適した色とされています。
さらに、青を基調とした露草色は知性や冷静さを連想させ、派手さを抑えた上品で落ち着いた印象を与えます。
控えめでありながらも品格を感じさせるため、大人向けのデザインや、静かな雰囲気を演出したい場面とも相性が良い色です。
日本文化では、季節感や感情を色で表現することが多く、露草色も「夏の情景」や「淡い想い」「移ろう心」を表す色として使われてきました。
こうした背景を踏まえると、露草色は単なる装飾的な色ではなく、感性や情緒を伝えるための象徴的な色であるといえるでしょう。
露草色の使い方・活用シーン

ファッションでの露草色
露草色は、浴衣や着物、夏用の羽織などの和装によく用いられる色で、見た目にも涼やかで季節感を演出しやすいのが特徴です。
白や生成りと合わせることで、清潔感と上品さが際立ち、暑い季節でも重たく見えません。
また、帯や小物に露草色を取り入れることで、全体の印象を引き締めるアクセントとしても活躍します。
近年では、和装に限らず、シャツやブラウス、ワンピースなどの洋服にも取り入れやすい色として注目されています。
淡く透明感のある色味のため、カジュアルにもきれいめにも合わせやすく、夏のコーディネートに爽やかさをプラスしたいときに適しています。
インテリア・デザインでの露草色
インテリアやデザイン分野では、露草色をアクセントカラーとして使うことで、空間全体に清涼感を与えることができます。
クッションやカーテン、器などに部分的に取り入れると、主張しすぎず上品な印象に仕上がります。
また、和モダンなインテリアとの相性が良く、木材や畳、和紙などの自然素材と組み合わせることで、落ち着きのある空間を演出できます。
Webデザインや広告デザインにおいても、夏向けのビジュアルや涼感を表現したい場面で活用されることが多い色です。
他の色との相性
露草色は、組み合わせる色によって印象が大きく変わります。
- 白・生成り:清潔感と上品さが際立ち、和洋どちらにも使いやすい
- 灰色:全体を落ち着かせ、洗練された大人の配色に仕上がる
- 淡い黄色:初夏を思わせる明るく爽やかな組み合わせ
このように、露草色は主役にも脇役にもなれる柔軟さを持っており、用途や配色次第でさまざまな表情を楽しむことができます。
記事のまとめ
露草色とは、露草の花に由来する日本の伝統色で、透明感のある青紫系の美しい色合いが特徴です。
朝露に濡れて咲き、短い時間でしぼむ露草の姿と重なるように、その色には儚さや一瞬のきらめき、そして涼しげで静かな趣が込められています。
こうした背景から、露草色は古くから日本人の感性や季節観と深く結びついてきました。
また、露草色は見た目の美しさだけでなく、知性や上品さ、落ち着きといった心理的な印象も併せ持つ色です。
和歌や染色技法、伝統文化の中で培われてきた歴史を知ることで、この色が単なる「青」ではなく、情緒や物語性を宿した特別な色であることが理解できるでしょう。
意味や由来、色コード、活用方法を把握しておくことで、ファッションやインテリア、デザインに露草色を取り入れる際の表現の幅は大きく広がります。
季節感を大切にしたい場面や、控えめながら印象に残る配色を目指したいときに、露草色は心強い選択肢となるはずです。

