街中で見かける杖には、単なるデザインや高齢者向けの補助具という役割だけでなく、「その人の状態や配慮の必要性を周囲に伝える」という大切な意味が込められています。
特に白・赤・黄色といった色分けは、視覚障害の有無や程度、さらに周囲からのサポートがどの程度必要かを示す重要なサインとして機能しています。
これらの色は、本人の安全を守るだけでなく、周囲の人が適切な距離感や対応を取るための手がかりにもなっています。
本記事では、杖の色ごとに込められた意味や背景を整理し、実際に見かけた際にどのように理解し、どのような配慮や対応をすればよいのかを、初めて知る人にもわかりやすく解説します。
白杖とは?白い杖の意味と種類

歴史・役割・種類の基本情報
白杖(はくじょう)は、視覚に障害のある人が使用する杖で、周囲に「視覚障害があること」を知らせる国際的なシンボルです。
単なる歩行補助具ではなく、社会全体に対して注意喚起を行う“意思表示の道具”としての役割を持っています。
日本では正式に視覚障害者安全杖と呼ばれ、法律や公共マナーの面でも重要な位置づけがなされています。
白杖の役割は大きく分けて二つあります。
一つは段差や障害物を事前に察知し、転倒や事故を防ぐための「安全確保」。
もう一つは、周囲の人に対して視覚障害があることを伝え、歩行時や横断時に配慮を促す「社会的シグナル」としての役割です。
この二つが組み合わさることで、視覚障害のある人の自立した外出を支えています。
白杖には利用シーンや本人の状態に応じたいくつかの種類があります。
- 直杖:一本の棒状で最も基本的なタイプ。耐久性が高く、屋外での長距離歩行や通勤・通学に向いています。
- 折りたたみ杖:複数に分割でき、使用しない時はコンパクトに収納可能。公共交通機関や旅行時に便利です。
- ロービジョン用杖:弱視の人が使用する杖で、周囲への注意喚起を主目的とするケースが多く、長さが短めなこともあります。
白い色が採用されている理由は、昼夜を問わず視認性が高く、遠くからでも認識されやすいためです。
夜間の街灯や車のライト、混雑した駅構内などでも目に入りやすく、事故防止に大きく貢献しています。
赤い部分・赤い杖の意味とは

シグナルの意味と見分け方
白杖の先端や中ほどに赤い帯や赤色が入っている場合があります。
これは「視覚障害に加えて、聴覚にも障害がある可能性が高い」ことを示すサインです。
いわゆる盲ろう者を表す配色として知られており、日本国内でも段階的に認知が進んでいます。
赤い色が加えられている最大の理由は、情報伝達の方法が限られる可能性があることを周囲に知らせるためです。
視覚だけでなく聴覚にも制限がある場合、声掛けや音による注意喚起が届かないことがあります。
そのため、赤い部分は「より慎重な配慮が必要である」という強い注意喚起の意味合いを持っています。
見分け方としては、杖全体が赤いわけではなく、白杖をベースに先端や持ち手付近、中ほどに赤いラインや帯が入っているケースが一般的です。
この配色を知っているかどうかで、適切な対応ができるかが大きく変わります。
赤い杖を見た時の適切な対応
赤い部分のある白杖を見かけた場合は、通常の白杖以上に落ち着いた対応を意識することが大切です。
以下の点を心がけると、相手に不安や恐怖を与えにくくなります。
- 声だけに頼らず、事前に合図を意識しながら肩や腕に軽く触れて意思を伝える
- 正面からゆっくり近づき、自分の存在が分かるようにする
- 突然引っ張ったり、背後から触れたりしない
また、触れる際は必ず相手の反応を確認し、嫌がる様子があればすぐに距離を取る配慮も必要です。
支援は一方的に行うものではなく、相手の意思を尊重する姿勢が何より重要です。
赤い杖を正しく理解し、落ち着いた行動を取ることが、安心と安全につながります。
黄色い杖の意味と対象者

黄色が示す状態と使い方
黄色い杖は、主に弱視の人が使用することが多い杖です。
「全く見えないわけではないが、視力や視野に制限がある」状態を示しており、日常生活の中で危険を感じやすい場面があることを周囲に伝える役割を持っています。
視野が狭い、明暗の差が分かりにくい、距離感をつかみにくいといった特性を抱えている人が使用するケースが代表的です。
黄色は、工事現場や標識などにも使われる注意喚起色として広く認識されており、人の目に入りやすいという特徴があります。
そのため黄色い杖は、白杖ほど強いシンボル性はないものの、「特別な配慮が必要な状態である」ことをやわらかく周囲に伝えるサインとして機能します。
実際の使い方としては、段差の確認や足元の安全確保に加え、周囲の人に存在を認識してもらう目的で携帯されることが多く、駅構内や商業施設、病院など人の往来が多い屋内環境で使われるケースが増えています。
黄色い杖を見かけた際は、見えているように感じても無理に判断せず、さりげない配慮を意識することが大切です。
色の違いによる使い分けと見分け方

白・赤・黄色の比較と判断ポイント
色ごとの意味を整理すると、次のようになります。
これらの色分けは、本人の安全確保と周囲の理解を目的としたものであり、見た目以上に重要な役割を果たしています。
- 白杖(白のみ):視覚障害があることを示し、周囲に配慮や注意を促す基本的なシンボル
- 白+赤:視覚障害に加えて聴覚障害も併せ持つ可能性が高く、より慎重な関わりが求められる
- 黄色の杖:弱視など、部分的な視覚障害があり、状況によって見えにくさを抱えていることを示す
このように色の違いを知っておくことで、「なぜ声をかけても反応が薄いのか」「なぜ足取りが不安定に見えるのか」といった疑問を正しく理解する手助けになります。
一方で、いずれの場合も「必ず助けが必要」という意味ではありません。
支援が必要かどうかは、その時々の環境や本人の体調、行動の様子によって大きく異なります。
色だけで一律に判断するのではなく、歩行の様子や周囲を気にしている仕草などをさりげなく観察し、必要であれば一声かける姿勢が大切です。
色の意味を知識として理解しつつ、相手の意思や状況を尊重することが、適切な使い分けと配慮につながります。
よくある疑問(FAQ)

白杖の由来と象徴的意味
白杖は20世紀初頭、交通量の増加に伴う事故防止を目的として、視認性を高めるために白く塗られたことが起源とされています。
当初は実用的な工夫の一つでしたが、その後徐々に社会的な意味を持つようになり、現在では世界的に「視覚障害者を示す象徴」として広く認知されています。
日本においても白杖は特別な存在とされ、道路交通法や各自治体の条例において、白杖を使用している人への配慮や保護が明確に位置づけられています。
単なる道具ではなく、社会全体が理解し尊重すべきサインとして扱われている点が、白杖の大きな特徴です。
見えてる人が白杖を使う理由
一部の弱視者や視野狭窄のある人は、完全に視力を失っていなくても白杖を使用します。
これは段差や障害物を確認するための補助としてだけでなく、「周囲に配慮を促す」目的が大きな理由です。
一見すると問題なく歩いているように見えても、足元の小さな段差が認識しづらかったり、急な人の動きに対応しにくかったりする場合があります。
そのため白杖を使うことで、周囲の人に注意を向けてもらい、安全な距離を保ちやすくしているのです。
見た目だけで判断せず、本人の安全確保のための選択であることを理解する姿勢が大切です。
記事のまとめ
杖の色には、それぞれ明確な意味と役割があり、本人の状態や周囲に求められる配慮の度合いを静かに伝えています。
白・赤・黄色の違いを正しく理解することで、街中や公共施設、駅構内など日常のさまざまな場面で、困っている人に対してより自然で適切な配慮ができるようになります。
大切なのは、色の知識を知識のままで終わらせず、実際の行動につなげることです。
色だけで状況を決めつけたり、過度に構えたりするのではなく、相手の様子や周囲の環境を見ながら、必要に応じて一声かける、距離を保つといった柔軟な対応を心がけることが求められます。
杖の色を正しく理解することは、特別な支援をするためだけではなく、誰もが安心して外出できる社会をつくる第一歩です。
相手の立場に立った行動を意識することで、日常の中の小さな配慮が大きな安心につながっていきます。
